介護事業者・障害福祉事業者のための人材開発支援助成金

対象となる研修・申請方法をわかりやすく解説

介護・障害福祉業界において、慢性的な人材不足や定着率の低さは多くの経営者が抱える深刻な悩みです。
これから事業を始める創業者の方や、すでに事業を展開している中小事業者の方にとって、職員のスキルアップやキャリア形成を支援することは、サービスの質を向上させ、離職を防ぐために欠かせません。

しかし、「研修に行かせたいが費用がかかる」「シフト調整や受講中の給与負担が重い」といった理由で、人材育成を後回しにしてしまってはいないでしょうか。

そこで活用したいのが「人材開発支援助成金」です。
この助成金を正しく活用すれば、国から経費や賃金の一部を助成されながら、職員のスキルアップを実現できます。

このサイトでは、介護事業者・障害福祉事業者に向け、人材開発支援助成金の対象となる研修や申請の仕組み、そして陥りやすい失敗例まで、専門家の視点からわかりやすく解説します。
助成金を活用して「人が育ち、定着する職場」を作るための第一歩として、ぜひお役立てください。

目次
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人材育成は「コスト」ではなく「経営課題」

介護・障害福祉事業では、人材育成を単なる研修費用として考えると、なかなか積極的な投資判断ができません。

しかし、職員の知識・技術が向上すれば、サービス品質の向上だけでなく、業務効率化、事故やトラブルの防止、職員の定着、管理者候補の育成などにつながります。

例えば、次のような課題を抱えていないでしょうか。

「新人職員によって業務のやり方がばらばら」「中堅職員をリーダーとして育てたい」「サービス提供責任者や管理者を育成したい」「介護記録やICTシステムをもっと活用したい」「外国人職員の教育体制を整えたい」「パート・有期契約職員の正社員化を進めたい」

これらは、単なる「研修の問題」ではありません。

今後どのような事業所にしていくのか、どのような人材を確保・育成するのかという経営戦略の問題です。

人材開発支援助成金も、「助成金が使える研修を探す」という発想だけではなく、「経営課題を解決するために必要な人材育成を設計し、その訓練について助成金を活用する」という順番で考えることが重要です。

介護事業者・障害福祉事業者の人材開発支援助成金活用事例

ここでは、介護事業者・障害福祉事業者が検討しやすい活用方法を、具体的な事例として紹介します。

なお、以下は制度の活用イメージを理解するためのモデルケースです。実際に助成対象となるかどうかは、訓練内容、対象労働者、実施方法、申請時期などを個別に確認する必要があります。

【事例1】新人職員の専門能力を高める

訪問介護事業所で、新たに採用した職員や既存職員に対して、介護技術、安全管理、認知症ケアなど、職務に関連する専門的な訓練を計画的に実施するケースです。

人材育成支援コースには、職務に関連した10時間以上のOFF-JTを実施する「人材育成訓練」があります。
中小企業の場合、通常の人材育成訓練では経費助成率45%、訓練修了後の賃上げ等の一定の要件を満たした場合には60%となる仕組みがあります。

介護職員の能力向上と処遇改善を別々に考えるのではなく、①研修によって職員の能力を高める→②その成果を評価する→③賃金や資格手当などの処遇につなげる、という人材育成の流れをつくることがポイントです。

【事例2】パート職員などの正社員化につなげる

介護事業所では、パート・有期契約で採用した職員が、経験を積んだ後に正社員として活躍するケースがあります。

こうした人材について、単に雇用契約を変更するだけではなく、OJTとOFF-JTを組み合わせた「有期実習型訓練」を活用して、実践的な能力を身につけてもらう方法があります。

人材育成支援コースの有期実習型訓練は、有期契約労働者等の正社員転換などを目的とした制度です。
中小企業の場合、経費助成率は75%、訓練修了後の賃金引上げ等の要件を満たす場合は100%とされています。また、OJT実施助成も設けられています。

「正社員化」と「職業能力の向上」を一体として考えられる点が、この制度の大きな特徴です。

【事例3】ICT・業務効率化に対応できる職員を育成する

介護記録システム、業務管理システム、ICT機器などを導入する場合、機器を購入するだけでは十分に効果を発揮できないことがあります。

そこで、職員にデジタル技術を活用するための知識・技能を身につけてもらうことが重要になります。

例えば、事業所全体のICT活用を進めるため、管理者やリーダー職員を対象として、業務改善、デジタル活用、データ分析などの訓練を実施することが考えられます。

特に「事業展開等リスキリング支援コース」は、新規事業の立ち上げなどの事業展開や、DX・GX化などに伴って新たな分野で必要となる知識・技能を習得させる訓練を対象としています。中小企業では経費助成率75%、賃金助成は1人1時間当たり1,000円とされており、2026年度末までの時限措置です。

介護事業者が単なる「パソコン研修」として考えるのではなく、「事業所のDX化という経営課題を解決するための人材育成」として設計することが重要です。

処遇改善加算との親和性にも注目

介護事業者・障害福祉事業者にとって、人材育成を考える際に切り離せないのが「処遇改善」です。

介護職員等の処遇改善は、介護人材の確保・育成・定着という観点からも重要なテーマとされています。
厚生労働省も介護人材確保対策として、処遇改善と人材の確保・育成を一体的に進めています。

人材開発支援助成金には、訓練終了後の賃金改定による5%以上の賃金上昇、または一定の資格等手当を支給したうえで3%以上賃金が上昇する場合などに、助成率等が加算される仕組みがあります。

そのため、次の流れをつくることは、人材確保・定着を考えるうえでも有効です。

  1. 必要な職員を育成する
  2. 能力・資格を高める
  3. 賃金・手当などの処遇に反映する

ただし、処遇改善加算と人材開発支援助成金は別々の制度です。それぞれに異なる要件がありますので、「処遇改善による賃上げを行えば、人材開発支援助成金も必ず使える」と考えるのは危険です。実際の併用可能性については、賃金の内容や訓練計画などを含めて個別に確認する必要があります。

人材開発支援助成金とは?

人材開発支援助成金は、事業主が雇用する労働者に対して、職務に関連した専門的な知識・技能を習得させるための職業訓練等を計画的に実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部などを助成する制度です。

重要なのは、「従業員のための研修費を補助してもらう制度」というだけではないことです。

助成金を活用するためには、「誰に」「何を」「いつ」「どのような方法で」「なぜ訓練するのか」を明確にした計画が必要になります。

つまり、人材開発支援助成金は、人材育成を計画的に進めるための仕組みとして利用することができます。

人材開発支援助成金には複数のコースがある

人材開発支援助成金には、複数のコースがあります。主要なコースとして「人材育成支援コース」「教育訓練休暇等付与コース」「人への投資促進コース」「事業展開等リスキリング支援コース」などがあげられます。また、建設労働者や障害者を対象とした別のコースもあります。

介護事業者・障害福祉事業者がまず検討しやすいのは、次のコースです。

人材育成支援コース

職務に関連する知識・技能を習得するための訓練を実施した場合などに、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成します。

10時間以上のOFF-JTを行う「人材育成訓練」のほか、OJTとOFF-JTを組み合わせた訓練、非正規雇用労働者の正社員化を目的とした訓練などがあります。

職員の専門能力向上や、パート職員等の正社員化を検討している事業者にとって、特に重要なコースです。

教育訓練休暇等付与コース

教育訓練休暇制度などを導入し、労働者がその休暇を取得して訓練を受けた場合に助成する制度です。

3年間に5日以上取得できる有給の教育訓練休暇制度を導入し、実際に職員に取得させた場合に助成されます。

「働きながら資格や専門能力を高めたい」という職員を支援する仕組みとして活用を検討できます。

人への投資促進コース

デジタル人材・高度人材を育成する訓練、自発的な職業能力開発、定額制の研修サービスなどが対象となるコースです。

例えば、複数の職員が継続的にオンライン研修を受講する事業所では、「定額制訓練」が選択肢となる場合があります。

中小企業の定額制訓練では、経費助成率60%が基本で、一定の賃金要件・資格等手当要件を満たす場合は助成率が15%加算されます。

事業展開等リスキリング支援コース

新規事業やDX・GX化など、事業展開に伴って必要となる新たな知識・技能を習得する訓練を対象とするコースです。中小企業では経費助成率75%、賃金助成1人1時間当たり1,000円などの仕組みがあります。2026年度末までの時限措置である点にも注意が必要です。

介護事業所であれば、例えばICTを活用した業務改革や、新しいサービス展開のために必要となるデジタルスキルの習得などが検討テーマになります。ただし、単にパソコンを学ぶだけで対象になるわけではなく、事業展開等との関係性を確認する必要があります。

介護事業者・障害福祉事業者はどのように活用できる?

「研修を受ける」から「人材育成計画をつくる」へ

介護事業者・障害福祉事業者が人材開発支援助成金を活用する際には、まず「どんな研修が対象か」を探すのではなく、「自社にどんな人材が必要なのか」を考えることをおすすめします。

例えば、職位や役割ごとに必要な能力を整理し、具体的な訓練を組み合わせます。

  • 新人職員 → 基本的な介護・福祉サービスの知識・技能
  • 中堅職員 → リーダーシップ・後輩育成・業務改善
  • 管理者候補 → マネジメント・労務管理・収支管理
  • 専門職 → 専門的知識・資格・高度な支援技術
  • ICT担当者 → デジタル活用・業務改善

事業所の成長段階によって必要な人材は変わる

開業直後の事業所では、現場を安定させるための基本的な職業能力が重要です。

利用者数が増えてきた段階では、リーダー・管理者の育成が重要になります。

さらに事業所を増やす段階になると、管理職育成、業務標準化、ICT活用、人材マネジメントなどの能力が必要になります。

このように考えると、人材育成は「毎年同じ研修を受けること」ではありません。

事業の成長に合わせて、必要な人材像は変わります。
事業のフェーズごとに応じて活用できるコースは変わるため、単発の研修ではなく、中長期の人材育成計画として捉えることが、助成金を無理なく使いこなすコツです。

どのような訓練が対象になる?

OFF-JTとは?

人材開発支援助成金を理解するうえで重要なのが「OFF-JT」です。

OFF-JT(Off the Job Training)とは、通常の仕事から離れて行う職業訓練を指します。
例えば、教育訓練機関が実施する専門研修、講師を招いて行う研修、オンラインによる職業訓練などがあります。

人材育成支援コースの人材育成訓練では、10時間以上のOFF-JTによる訓練が基本的な対象となります。ただし、「10時間以上なら何でも対象」という意味ではありません。

訓練内容が職務に関連していること、対象となる労働者であること、実施方法や記録が要件を満たすことなど、複数の条件を確認する必要があります。

OJTを組み合わせた訓練もある

OJT(On the Job Training)とは、適格な指導者の指導のもと、企業内の事業活動の中で実務を通じて行われる訓練です。

介護事業・障害福祉事業では、実際の現場で仕事をしながら能力を身につけることも重要です。そこで活用を検討できるのが、OJTとOFF-JTを組み合わせた訓練です。

特に人材育成支援コースの有期実習型訓練では、OJTとOFF-JTを組み合わせて職業能力を高め、正社員転換などにつなげる仕組みが設けられています。

「研修室での勉強」と「現場での実践」を別々に考えるのではなく、一つの人材育成プログラムとして設計できる点が特徴です。

eラーニング・通信制・定額制サービスにも注意

近年は、介護職員が時間や場所に縛られず学習できるeラーニングやオンライン研修、サブスクリプション型の研修サービスも増えています。

人材開発支援助成金でも、eラーニングや通信制、定額制サービスに対応した仕組みがあります。
ただし、「オンライン研修だから対象」「定額制だから対象」という単純な判断はできません。

どの講座を、誰が、どのように受講し、訓練としてどのような実施記録を残すのかを確認する必要があります。

助成金はいくらもらえる?知っておきたい助成内容

人材開発支援助成金には、主に「経費助成」と「賃金助成」という考え方があります。

訓練にかかった経費の一部が助成される

例えば、人材育成支援コースの人材育成訓練では、中小企業の正規雇用労働者を対象とした訓練について、経費助成率45%が基本となっています。

訓練修了後の賃金引上げ等について一定の要件を満たした場合には60%となります。

一方、有期契約労働者等を対象とする人材育成訓練や有期実習型訓練では、より高い助成率が設定される場合があります。

訓練期間中の賃金が助成される場合もある

訓練の種類によっては、従業員が訓練を受けている時間について、賃金の一部が助成される場合があります。

現在の制度では、例えば人材育成支援コースの人材育成訓練について、中小企業の場合、通常の賃金助成は1人1時間800円、一定の賃金引上げ等の要件を満たす場合は1,000円とされています。事業展開等リスキリング支援コースでは、中小企業の賃金助成は1人1時間1,000円です。

ただし、すべての訓練形式で賃金助成が受けられるわけではありません。

助成率だけで判断してはいけない

「75%助成されるからお得」という判断は危険です。

実際には、訓練そのものが対象になるか、経費のうち何が助成対象になるか、対象となる職員は誰か、賃金助成を受けられるか、上限額はいくらか、などによって、実際の支給額は変わります。

助成率を見る前に、「その研修が本当に自社の経営課題を解決するものなのか」を考えることも大切です。

なお、助成率・上限額・対象コースの詳細は、年度ごとの制度改正によって変わります。本サイトの内容は執筆時点のものであり、実際の申請にあたっては厚生労働省の最新情報、または専門家への確認が必須です。

申請で最も重要なのは「事前準備」

人材開発支援助成金で最も注意したいのが、「研修を始めてから助成金を考える」という進め方です。

「研修を申し込んでから申請」では遅いことがある

人材開発支援助成金は、原則として訓練開始前に計画を提出する必要があります。

職業訓練実施計画届の提出期間については、原則として訓練開始日の1か月前までとされています。
コース等によっては訓練開始日の6か月前から提出できるものもあります。

したがって、①来月この研修を受けよう、②研修会社に申込み、③あとから助成金を調べる、という順番では、申請が間に合わない可能性があります。

研修を申し込む前に、助成金の対象となるかを確認することが重要です。

計画届・支給申請の2段階で考える

人材開発支援助成金は、「申請書を1回提出して終わり」という制度ではありません。

基本的には、① 職業能力開発推進者の選任と事業内能力開発計画の策定、② 職業訓練実施計画届の提出、③ 訓練の実施、④ 支給申請という流れで考える必要があります。

厚生労働省もコースごとに計画届や支給申請に必要な書類を公開しています。

  1. 職業能力開発推進者の選任と事業内職業能力開発計画の策定:助成金の前提となる社内体制を整えます。
  2. 職業訓練実施計画届の提出:訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に、管轄の労働局へ提出します。この提出期間は近年の制度改正で「1か月前まで」から拡大されたもので、計画的なスケジュールが立てやすくなりました。
  3. 訓練の実施:計画に沿って研修を行います。訓練費用は、支給申請までに事業主が支払いを済ませておく必要があります。
  4. 支給申請:訓練終了日の翌日から2か月以内に、必要書類を添付して申請します。

必要書類を最初から管理する

助成金の申請では、申請書だけでなく、出勤簿、賃金台帳、受講者名簿、カリキュラム、領収書など、訓練の前後を通じて管理すべき書類は多岐にわたります。研修が終わってから書類を集めようとすると、出勤記録や賃金の証拠が不足し、審査で不支給となるリスクが高まります。

そのため、訓練を開始する段階から、「何を保存するのか」「誰が管理するのか」を決めておくことが重要です。

介護事業者・障害福祉事業者が陥りやすい失敗

研修を先に申し込んでしまう

最も典型的な失敗です。

「良さそうな研修だから申し込んだ。しかし、助成金について調べたら事前の計画届が必要だった」というケースです。
対象外になることが非常に多く見られます。

助成金を使う可能性があるなら、契約・申込み・受講開始の前に確認しましょう。

対象になる研修だと思い込んでしまう

介護職員向けの研修だからといって、すべてが対象になるわけではありません。

訓練内容、時間、対象労働者、訓練方法、訓練実施者などについては要件があります。

ビジネスマナー研修や汎用的な語学研修など、職務と関連性が薄い研修は対象外になりやすい点に注意が必要です。
「介護の研修だから対象だろう」という判断は避けるべきです。

必要書類を後から集めようとする

助成金の申請では、訓練実施を確認できる資料などが重要になります。

ところが、研修終了後になって「受講したことを証明する資料が足りない」「請求書や領収書の整理ができていない」となると、確認作業が非常に大変になります。

また、出勤簿や賃金台帳は日々の記録が前提であり、後からの再現は困難です。

最初から助成金申請を意識した書類管理を行いましょう。

助成金の条件だけを見て、人材育成計画がない

「助成率が高いからこの研修を受ける」という発想では、本来の目的から外れてしまいます。

重要なのは、「この職員に、この能力を身につけてもらうことで、事業所がどう変わるのか」です。

自社が対象になるか確認するためのチェックポイント

人材開発支援助成金の活用を検討するときは、次の項目を確認してみましょう。

□ 雇用保険の適用事業所である

□ 対象となる労働者が雇用保険の被保険者である

□ 訓練内容が職務に関連している

□ 必要な訓練時間・実施方法などの要件を満たしている

□ 訓練開始前に必要な計画届を提出できる

□ 訓練の実施状況を証明できる資料を残せる

□ 訓練費用の支払いを確認できる

□ 助成対象経費と対象外経費を区別できる

□ 賃金助成を受ける場合、訓練時間中の賃金支払いを適切に管理できる

□ 訓練後の賃金引上げ等の加算要件を利用する場合、その条件を満たせる

一つでも判断に迷う項目があれば、研修を申し込む前に専門家や管轄の労働局へ確認することをおすすめします。

社会保険労務士・行政書士に相談するメリット

人材開発支援助成金は、単純に申請書へ数字を記入するだけの制度ではありません。

重要なのは、「自社の人材育成計画と助成金の制度をどう結びつけるか」です。

「使える助成金を探す」だけではなく「使える計画をつくる」

例えば、「管理者を育成したい」という経営課題があったとします。

そこから、次の順番で考える必要があります。

  1. 必要な能力は何か
  2. どのような訓練が必要か
  3. どのコースが適しているか
  4. 助成対象になるか
  5. いつまでに計画届を提出するか
  6. どのような資料を保存するか

専門家に相談することで、助成金ありきではなく、経営課題から逆算して人材育成を考えやすくなります。

申請前に確認すべきポイントを整理できる

人材開発支援助成金では、訓練開始前の計画や、訓練実施後の支給申請など、複数の手続きが発生します。

また、計画届の提出期限、必要書類、対象労働者の要件など、確認すべき項目は多岐に渡ります。

さらに、毎年、様式や制度内容の改正が行われています。

専門家に依頼することで、最新情報を確認しながら、抜け漏れのない準備がしやすくなり、訓練開始前の限られた時間の中でも落ち着いて手続きを進めることができます。

介護・障害福祉事業の経営課題と人材育成を一緒に考える

介護事業・障害福祉事業では、人材育成だけでなく、指定申請、運営体制、就業規則・労務管理、処遇改善、助成金・補助金、人材採用、業務改善、事業計画など、複数の課題が同時に発生します。

介護事業・障害福祉事業には他業種にはない専門的な論点が数多くあります。

そのため、人材開発支援助成金だけを見るのではなく、「人材育成を経営全体の中でどう位置付けるか」という視点が重要です。

社会保険労務士や行政書士は、こうした制度全体を踏まえたうえで、助成金の活用と経営課題の解決を一体で考えることができます。

人材育成を「助成金」から考えるのではなく、「経営戦略」から考える

人材開発支援助成金を活用すると、研修費用や訓練期間中の賃金の一部について助成を受けられる可能性があります。

しかし、助成金を受け取ること自体が経営の目的になってはいけません。

本当に重要なのは、「どのような事業所をつくりたいのか」「そのためには、どのような人材が必要なのか」「職員にどのような能力を身につけてもらうのか」「能力向上をどのように評価し、処遇につなげるのか」という点です。

人材開発支援助成金は、こうした人材育成を経済面から支える制度の一つと考えると、活用方法が見えてきます。

例えば、採用 → 育成 → 資格取得・能力向上 → リーダー・管理者への登用 → 賃金・手当への反映 → 定着 という人材育成の循環をつくることができれば、助成金を「一度申請して終わる制度」ではなく、事業所の成長を支える仕組みとして活用できます。

また、処遇改善加算のキャリアパス要件を満たすための研修計画と、人材開発支援助成金の対象となる訓練計画を重ねて設計すれば、加算の維持・向上と研修費用の軽減を同時に実現できます。

人事育成を単発のコストではなく、事業所の将来を支える経営戦略として位置付けることが、介護事業・障害福祉事業を長く安定して運営していくための土台になります。

まとめ

介護事業者・障害福祉事業者にとって、人材育成は「研修費用」という一時的なコストではなく、採用、定着、サービス品質、業務効率、管理者育成、賃上げなどに関わる重要な経営課題です。

人材開発支援助成金は、職員の職業能力を高めるための訓練について、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部などを助成する制度です。人材育成支援コースをはじめ、人への投資促進コース、事業展開等リスキリング支援コースなど、目的に応じて複数の選択肢があります。

一方で、助成金は「研修を受けた後に申請すればよい」という制度ではありません。

特に重要なのは、次の事前準備です。

  1. 自社に必要な人材を明確にする
  2. 必要な訓練を決める
  3. 対象となるコース・要件を確認する
  4. 訓練開始前に必要な手続きを行う
  5. 訓練の実施記録・費用等を適切に管理する

また、今年度も制度改正が行われているため、過去の制度情報だけを参考にせず、最新のパンフレットや支給要領を確認することが重要です。

「自社の研修は対象になるのか」「処遇改善による賃上げとどう組み合わせられるのか」「正社員化と人材育成を一緒に進められるのか」など、判断に迷う場合は、研修を申し込む前に社会保険労務士などの専門家へ相談することをおすすめします。

助成金を探すことから始めるのではなく、「どのような事業所をつくるために、どのような人材を育てるのか」から逆算することが、人材開発支援助成金を有効に活用する第一歩です。

よくある質問

介護職員向けの研修なら、人材開発支援助成金を使えますか?

必ず使えるわけではありません。

訓練内容、対象労働者、訓練時間、訓練方法、実施時期などについて要件があります。介護職員向けというだけで対象になるわけではありません。

研修を始めてから申請できますか?

原則として、研修開始前の計画届が重要です。

人材開発支援助成金の支給要領では、職業訓練実施計画届について原則として訓練開始日の1か月前までの提出が定められています。訓練を申し込む前に、申請時期を確認することが大切です。

処遇改善加算の研修計画と一緒に考えることはできますか?

できます。

処遇改善加算のキャリアパス要件で求められる研修計画を、人材開発支援助成金の対象となる訓練として設計することで、両方の目的を同時に満たせる可能性があります。

最終更新日:2026/9/●